第9回(2020)バスケコラム基礎編 五大栄養素について~ミネラル~
はじめに
五大栄養素最後のテーマになりました。ミネラルについてお話しします。
体重の96%は酸素、炭素、水素、窒素が、残り4%はミネラル(無機質)が占めています。
たった4%でも、欠かすことのできない重要な働きをしています。
・カルシウム、リン、マグネシウムは骨や歯
・細胞膜のリン脂質、薬物代謝、酸素運搬保持、抗酸化、プリン化合物の分解などに関わる酵素活性や補助因子として必要
・体液のpHや浸透圧の調整、神経、筋細胞の興奮にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム
多量ミネラル
カルシウム
体内に最も多く含まれるミネラルで99%は骨や歯で、血液や筋肉、神経にも存在します。
血液の酸アルカリ平衡維持、血液凝固、神経刺激の伝達、筋収縮に関与しています。
最も不足しがちなミネラル
食物によってカルシウムの吸収率は異なり、野菜類が5-27%小魚類が25-50%牛乳が40-85%と動物性食品の方が高い数値になっています。
リン
カルシウムの次に多いミネラルでカルシウムと共に骨や歯に存在し、リン酸化合物としてすべての組織に含まれます。
血液や体液の浸透圧や酸アルカリ平衡維持、エネルギー代謝で重要な働きをしています。
リンの摂取量はカルシウムの吸収に大きく影響しリンが多いほどカルシウムの吸収率は低下します。比率は1:1か1:2程度(後者がリン)が好ましいとされています。食品添加物として加工食品に広く用いられているのでリンは過剰摂取が問題になっています。
ナトリウムと塩素
細胞外液に存在し体液の浸透圧の調節や酸アルカリ平衡維持に役立ちます。塩素は胃酸の生成に必要で食塩として食品中に含まれます。過剰な食塩は腎臓から尿に、皮膚から汗で排出されますが、高血圧などを引き起こす要因のため摂りすぎには注意です。
細胞内液に多く含まれ、細胞外液(ナトリウム)とのバランス維持で浸透圧の調整をしています。
カルシウムとバランスよく摂取すべきで、不足すると骨形成や心臓に影響が出ます。
微量ミネラル
鉄
体内の鉄の半分以上は赤血球中のヘモグロビンの構成成分となっており筋肉中のミオグロビンにも含まれます。
ヘモグロビンは血液中で酸素を運ぶ役割があります。
鉄は不足しがちなミネラルで出血・妊娠・授乳などによる鉄の損失に加え食事摂取量が少ないと貧血になります。穀類や豆類、野菜類に含まれる鉄(非ヘム鉄)よりも動物性食品(肉魚)に含まれるヘム鉄の方が吸収率は高くなります。ビタミンCを合わせて摂ると鉄の吸収率は高くなり、反対に紅茶などに含まれるタンニンという成分は低下させます。
すべての細胞に存在し酵素の金属成分として酵素の安定化と活性化に寄与します。抗酸化酵素、DNA合成に関与し不足すると成長障害や免疫低下・味覚障害などが起こります。
銅
多くの組織や細胞に広く分布し抗酸化酵素などを活性化するのに必要です。不足すると鉄の吸収率も低下するとされています。牡蠣や豆類・種実類に多いです。
鉄と共存分布し、酵素の構成成分やリン酸カルシウム施製促進作用による骨形成や生殖機能に関与するとされています。マンガンは茶葉など植物性食品に多く含まれています。
甲状腺に存在し甲状腺ホルモンとしてたんぱく質合成(発育促進)やエネルギー代謝(基礎代謝亢進)に関与します。海藻類に多く含まれ、不足することはないとされています。
セレン
抗酸化酵素の構成元素で、ビタミンEなど抗酸化物質と共存し活性酸素化障害から生体防御しているとされています。不足すると成長障害や免疫低下などがあり、穀類に多く含まれます。
クロム
糖代謝と脂質代謝に不可欠なミネラルで耐糖能の改善に関わるとされています。
酵素活性に必要で、不足することはあまりありません。豆類、肉・魚に多く含まれます。
まとめ
ミネラルは生体組織の構成成分で生体機能の調節をする
ミネラルは体内で生成されないので食事で補給する
参考文献
編:薗田勝 栄養科学イラストレイテッド生化学改訂第2版 羊土社
著:下村道子ほか 新版フードデザインCOOKING&ARRANGEMENT 教育図書株式会社